本文へスキップ

札幌すすきののオーセンティックバー、BARやまざきへようこそ。

電話でのご予約・お問い合わせはTEL.011-221-7363

午後6時-深夜0時30分 日曜定休

〒060-0063 札幌市中央区南3条西3丁目 克美ビル4階

BARやまざき

BARやまざきについて(約2000字)

ビルの4階でエレベーターを降りると、赤れんがの壁にある横顔のシルエットをかたどった丸い照明看板が目に留まります。マホガニーの自動ドアの取手を押すとドアが静かに横に開き、正面から右手方向にはBox席、左手方向には長い一枚板のカウンターが伸びています。カウンターの背景にあるチーク材の棚には優に数百を超える酒瓶が整然と並んでいます。

オーセンティック・バーとしてはやや明るめな照明のもと、歳月を経た、しかし良く手入れされた店内には真空管アンプが奏でるジャズが静かに流れています。特注のレンガや、フランス人客が「地元でも今ではとても手に入らない」(おそらくは「新品では手に入らない」という意味でしょう)と驚嘆したゴブラン織を壁にしつらえたBox席など、上質であっても華美ではない室内に相応しく、バーテンダーの接客マナーは くだけたものではありませんが 慇懃に過ぎることもなく、「全国的に有名な半世紀を経た老舗」というイメージから連想されるような堅苦しさは微塵もありません。

店内では実に多彩なお客様がそれぞれにくつろいでおられます。専門職の方や経営幹部、若いOLさんや年配のご夫婦、外国からの旅行者、市内の学生さん、お酒が大好きな方はもちろん、アルコールを全く受けつけない体質の方もリラックスしてBARでのひとときを楽しんでおられます。そとからはライバル同士と目されがちな著名な人達もしばし鎧を脱いでカウンターに肩を並べています。「下にも置かないおもてなし」に飽き飽きしている方達にとっては、さりげない普通のおもてなしが心地よいのでしょう。一方でそれを物足りなく感じられる方がおられるとしても不思議ではありません。

店主 山崎達郎は大正9年生まれ。戦前の洋酒文化を今に伝える『東京會舘スタイル』を受け継ぐバーテンダーとして、伝統的なカクテルに通じているのはもちろんのこと、創作カクテルの分野でも数々の世界的なタイトルを受けてきました。旅行先の宿でふと仕事について語ると「お客様、退職なさった校長先生かなにかだとばかり思っておりました」と言われることがたびたびだったという山崎は、ユーモアのセンスに富んではいても基本的にきまじめ。夜の世界に伴うことを半ば期待される ある種の雰囲気を期待して来店されたお客様が多少の物足りなさを感じることがあるとしても、それも不思議ではありません。

そんな山崎に惹き付けられてやまざきでキャリアを重ねてきた相蘇も、朗らかでまじめな青年のキャラクターはそのままに、いまや30代のベテランとしてチーフバーテンダーを務めています。カクテルはもとよりウイスキーについても造詣が深く、スコッチに関する知識と感性には店主 山崎達郎も一目置きます。

鈴木明大は20代後半、新卒からずっとやまざきでキャリアを積んできました。今も筋力トレーニングに精を出す太陽が似合う青年ですが、テレビでバーテンダーが出てくる一瞬の場面を目にしたとき、これが自分の天職だと瞬時に悟ったといいます。店主 山崎達郎の指導について鈴木は「マスターはめったに何か指示したり怒ったりすることはありません。なにかおっしゃるときでも必ず一晩考えてから一言二言簡潔に仰います。ですから、マスターの一言には重みがあります。」と述べます。山崎は言います。「店主が怒鳴ったりするとスタッフは店主の顔ばかりを見るようになります。お客様の方に気持ちを集中するためには、店主は怒らないのが一番です。」 そのような意味で、やまざきのスタッフをこれまで育ててきたのはお客様ということになるかもしれません。

向井仁美は最年少、内外のコンクールにも果敢に挑戦する意欲的な若手ですが、専門学校の実習で山崎に出会わなければ、今の仕事をしていなかっただろうと言います。

このように、店主をはじめやまざきのスタッフはみな、夜の世界に多少似つかわしくないところもある、不思議な魅力を湛えたキャラクターの持ち主のように思えます。どちらかといえばやまざきのスタッフは代々、夜の人らしくない不思議な魅力を湛えた人たちだったように思えます。そのことがたまらなく居心地が良いと感じるファンも内外に多い一方、時代を経た老舗BARに期待されるイメージとは少し異なると感じるお客様もいないわけではありません。それでも半世紀の長きに亘って営業を続けてこられましたのは、このようなバーがあってよいというお客様のご支持があったればこその奇跡といえます。

山崎のもとで修行をして巣立っていったバーテンダーは半世紀を経て全国に数多。店主は歳を取るものの、スタッフはたいてい中年になる頃には独立していくため、店主を支えるスタッフはいつも青年たち、という陣容で半世紀を経てきました。老人には老人なりの、若者には若者なりの課題もあろうかと存じますが、北国の少々変わった正統派BARでのひとときを、どうぞ存分に楽しまれますように。